こんにちは、リハビリテーション科スタッフです。
先日、当院のリハビリ室にて、サイボーグ型ロボットHAL(ハル)を体験する機会を得ましたので、報告を兼ねて少しご紹介したいと思います。
昨今、大手企業が新たなロボットを発表して話題になったり、家庭用ロボットが次々と発売されるなどして、ロボットが私達の目に触れる機会が多くなったように感じます。
実際に私達が足を運ぶ飲食店の店頭ではロボットがお出迎えというような光景もみられ、ロボットがより身近な存在と感じられる時代になってきました。
さて、今回私たちが体験したHAL(Hybrid Assistive Limb)は、身体に装着することで立ち上がりや歩行などの運動を支援するロボットスーツで、神経・筋難病疾患に対する歩行機能改善のために保険適用が認められています。
当院では、ALSなどの神経・筋難病疾患の患者様を受け入れており、現在HALの導入に向けて準備を始めています。
HALの最大の特徴は、機械が強制するのではなく、人の意思に従って動くという部分で、自動型ロボットに対し「随意型」ロボットと分類されます。
人が動こうという意思を生体電気信号を通して読み取り必要な動きを補助してくれるため、筋力が低下して歩きたくても歩けない方に力を貸して、実際に歩く練習ができるということになります。
前置きが長くなりましたが、実際に装着してみての感想は、
まさに「感動!」です。
動きのきっかけは全て自分の意思であり、「立ち上がろう」と思い動作を始めようとすると、ほとんど自分の力を使わずに立ち上がれている感覚です。歩行の際はバランスを崩さないように専用の荷重免荷装置や歩行器を使用します。立位でつかまった状態で「歩こう」と思うと、自分が普段歩く時に用いる力を出し切る前にすでに歩き出しているという不思議な感覚を味わいました。強制されている感じではなく、自分で歩いているのですが、HALが力を貸してくれているため、普段歩いて生活している私にとっては「歩かせてもらっている」ように感じられました。
これまで機能低下している患者様に対する歩行練習は、手すりや歩行器、下肢装具などの歩行補助具は使用しつつも、不足した筋力を補うために私たちリハビリスタッフが腰を支えたり、下肢を介助で持ち上げて振り出したりして、時には患者様・介助者とも汗だくになりながらリハビリする場面もありました。
筋力低下が重度であると介助量が多く安全確保が困難であったり、患者様の身体的負担が大きかったりして歩行練習を実施できないケースもあったと思います。
HALは、そのような患者様方の筋力低下を補助し、患者様の身体的負担を軽減したうえで、より正常歩行に近い動作パターンを誘導します。
「立ちたい」「歩きたい」という思いに従って装着者の脚を動かし、「立てた」「歩けた」という感覚のフィードバックをタイミングよく行うことで脳の学習を促します。
今回、機器の使用体験を通して、これから多くの患者様やご家族はもちろん、患者様のニーズに応えるべくリハビリ業務に当たる私たちリハビリスタッフにとっても大きな手助けになるものと感じました。